第15回「出力設定 その7 ~Galaxy S II SC-02C向けのSpursEngineエンコーダ設定~」
TMPGEnc Video Mastering Works 5(TVMW5)のSpursEngine H.264エンコーダを用いた、スマートフォンGalaxy S II SC-02C向けの設定。
概要については第8,12回とほぼ同じ内容になります。

Galaxy S IIはサムスンのスマートフォンの最上位機種で、日本ではドコモがGalaxy S II/Galaxy S II LTE、auがGalaxy S II WiMAXを販売している。今回はドコモのGalaxy S II SC-02C向けのSpursEngine H.264設定です。
Galaxy S II SC-02CはSuper AMOLED Plusという有機ELディスプレイを搭載しており、解像度は800x480pixel。動画の再生もこの解像度である800x480pixelで作成することが望ましい。調査した結果以下のフォーマットであれば再生可能です。
- MPEG-4/AVCの場合
- HighProfile@4.1以下
- High@4.2以上は非対応。
- 1080p/720p対応
- ディスプレイ解像度800x480超えのサイズにも対応。他には、640x480/848x480/852x480も動作確認済み。
- 60p対応
- ただし、High@4.1内に限る(○1280x720/60p)(×1920x1080/60p)。原因は特定していないが(出力設定でどうにかなるかも不明)60pではたまにコマ落ちする。また、標準プレイヤーではサムネイルが表示されない問題も確認された。60pでの出力はこれらの点に気をつけてほしい。
- インターレース(60i)非推奨
- 再生できるもののインターレース解除されない。60iは30p/60pどちらかにインターレース解除してエンコードしましょう。
前々回書いたようにSpursEngine H.264エンコーダには定義済みの解像度しか利用できない仕様です。また、Galaxy S II SC-02Cの標準プレーヤーはアスペクト比を考慮しない(無視する)仕様で、ピクセルアスペクト比1:1でなければ適切な比率で再生することはできません。ピクセルアスペクト比1:1の "1280x720" または "640x480" を指定するしかありません。4:3向けの640x480は良いとしても、画面サイズよりも大きな "1280x720" では "800x480" ないしは "852x480" よりも多くのビットレートが必要です。
通常、16:9向けは "1280x720"、4:3向けは "640x480" を指定してほしい。
"1280x720" ではビットレートが無駄になるので、一般的ではないが "720x480" を解説する。
■(左)16:9映像の左右約6%をカット黒帯なし
●16:9映像を "映像リサイズ" フィルターで "768x480(サイズ指定中央表示)" にリサイズ ●出力設定でサイズを "720x480" に指定し左右24pixelずつ破棄 ●Galaxy S II SC-02Cの全画面表示で "800x480" に拡大
■(右)上下黒帯付きで16:9を格納
●16:9映像を "映像リサイズ" フィルターで "720x450(サイズ指定中央表示)" にリサイズ ●出力設定でサイズを "720x480" に指定し上下15pixelの黒帯追加 ●Galaxy S II SC-02Cの全画面表示で "800x480" に拡大
Galaxy S II SC-02C側での操作
●画面横向きが前提 ●左上のアイコンをタップし上記画像の状態にする(縦画面不可)アスペクト比無視なので、縦画面では当然ならが適切な比率にすることはできない。
(アスペクト比考慮のプレーヤー不可)アスペクト比無視の、ディスプレイ解像度800x480pixelを対象として作成したものです。
"映像リサイズ"フィルターの設定やプレーヤー側での操作など本来不必要な作業が必要ですので、よく理解できていない方は "1280x720" で出力した方が無難です。
ということで、アニメ/実写別、480p/720p解像度別、24p/30p/60pフレームレート別に12の出力テンプレートを用意しました。
ダウンロード
TMPGEnc Video Mastering Works 5 Galaxy S II SC-02C向けSpursEngine H.264出力テンプレート集
出力テンプレート(出力設定) 6ファイル入り
Galaxy S II SC-02C向けx264出力テンプレートはこちら
TMPGEnc Video Mastering Works 5 Galaxy S II SC-02C向けSpursEngine H.264出力テンプレート集
出力テンプレート(出力設定) 6ファイル入り
Galaxy S II SC-02C向けx264出力テンプレートはこちら
- 01_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_720x480p_24p.tvmw5e
- アニメ向け 720x480p 24p
- 最低画質:500kbps (低画質)800~2000(高画質)
- 02_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_720x480p_30p.tvmw5e
- アニメ向け 720x480p 30p
- 最低画質:500kbps (低画質)800~2000(高画質)
- 03_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_720x480p_60p.tvmw5e
- アニメ向け 720x480p 60p
- 最低画質:600kbps (低画質)1000~2500(高画質)
- 04_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_1280x720p_24p.tvmw5e
- アニメ向け 1280x720p 24p
- 最低画質:1300kbps (低画質)2500~6500(高画質)
- 05_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_1280x720p_30p.tvmw5e
- アニメ向け 1280x720p 30p
- 最低画質:1300kbps (低画質)2500~6500(高画質)
- 06_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_1280x720p_60p.tvmw5e
- アニメ向け 1280x720p 60p
- 最低画質:1500kbps (低画質)3000~8000(高画質)
- 07_SC-02C_SpursEng-H264_Film_720x480p_24p.tvmw5e
- 実写向け 720x480p 24p
- (低画質)800~2000(高画質)
- 08_SC-02C_SpursEng-H264_Film_720x480p_30p.tvmw5e
- 実写向け 720x480p 30p
- (低画質)800~2000(高画質)
- 09_SC-02C_SpursEng-H264_Film_720x480p_60p.tvmw5e
- 実写向け 720x480p 60p
- (低画質)1000~2500(高画質)
- 10_SC-02C_SpursEng-H264_Film_1280x720p_24p.tvmw5e
- 実写向け 1280x720p 24p
- (低画質)2500~6500(高画質)
- 11_SC-02C_SpursEng-H264_Film_1280x720p_30p.tvmw5e
- 実写向け 1280x720p 30p
- (低画質)2500~6500(高画質)
- 12_SC-02C_SpursEng-H264_Film_1280x720p_60p.tvmw5e
- 実写向け 1280x720p 60p
- (低画質)3000~8000(高画質)
説明した通り、60pではコマ落ちやサムネイル表示不可などの問題があります。
既に各出力テンプレート毎に最適な値を入力済みで、そのままエンコード出力を行うことができる。上記のように使用テンプレート毎に(低画質)(高画質)になるようビットレートを記載しておいたので、その範囲内で指定してほしい。画質に関しては、個人の許容範囲や感じ方が異なるので、(低画質)(高画質)は適当に決めた。
特にアニメでは、OPなど動きの激しい場面と、口パクだけの動きの少ない場面の必要ビットレートが極端に異なる。VBRはCRF程ダイナミックにビットレートを割り当てることができないので、動きの激しい場面の破錠を前提にアニメ向け(最低画質)ビットレートを記載。(最低画質)を指定すると、動きの激しい場面ではブロックノイズだらけになるが、静止場面ではある程度画質を維持でき、出来上がりサイズを小さくすることができる。
左右カット黒帯なし720x480で出力する場合

"画面中央に表示(指定したサイズ)" "768x480" "Lanczos-3" を指定する。リサイズ品質が気になる場合は "BiCubic" "Triangle" に変更する。記事頭の注意書きをきちんと読んでくださいね。
上下黒帯付き720x480で出力する場合

"画面中央に表示(指定したサイズ)" "720x450" "Lanczos-3" を指定する。リサイズ品質が気になる場合は "BiCubic" "Triangle" に変更する。記事頭の注意書きをきちんと読んでくださいね。
インポート済みの出力テンプレート
出力テンプレートのインポートは前回説明した通り、"ドキュメント" -> "TMPGEnc Video Mastering Works 5" -> "Template" -> "Export"

初期設定~01_SC-02C_SpursEng-H264_Anime_720x480p_24p.tvmw5e~
出力テンプレート毎におおよそ設定済みですので、特に変更する点はありませんので問題なければそのままエンコードしましょう。

"ビットレート"。画質と出来上がりサイズに影響します。高い値を指定すると画質は向上しますが、ファイルサイズが大きくなります。低い値を指定すると、画質は低下しますが、ファイルサイズは小さくなります。前項でビットレート指定範囲を記載していますので、その範囲内を指定しましょう。
"最大ビットレート"。平均ビットレートの1.5倍を超える値を指定すると予想ファイルサイズを大幅に超えてしまいます。平均ビットレートの1.5倍を指定するように調整してください。

"チャンネルモード" "ビットレート"。
通常設定 "ステレオ" "128kbps"
音質向上 "ステレオ" "192kbps" など高く指定する。
容量削減 "ステレオ" "96kbps" または "モノラル" "48kbps" など低く指定する。

GOP構造では特に変更する箇所はない。

詳細設定では特に変更する箇所はない。

その他では特に変更する箇所はない。
画面アスペクト比16:9いわゆるワイドな映像は上記の設定で良い。4:3の映像については、映像設定で "640x480" に変更するだけで良い。
720pや1080pの動画もそのまま再生できるのですが、それらの映像をソースとしてGalaxy S II SC-02C向けにエンコードすると、"インターレース解除"等のフィルタリングが不要になり高速にエンコードできる。またサイズが縮む。既に720p/1080pでエンコード済みの動画があれば試して欲しい。
SpursEngine H.264エンコーダはビットレート当たりの画質がx264よりも劣っている。画質を維持するにはかなりのビットレートが必要になりますので、画質及びファイルサイズ重視の方はx264エンコーダを利用しましょう。
画質及びファイルサイズを気にしないのであれば、SpursEgnineによる高速出力は使い道がある。
私が普段行なっている設定を万人向けに若干改善し解説しております。この方法が最適というものではなく、一ユーザーの私見として参考にしてもらえればと思います。
それでは。
(2012/02/05 - 初版)
■ペガシス
http://www.pegasys-inc.com/ja/
■TMPGEnc Video Mastering Works 5
http://tmpgenc.pegasys-inc.com/ja/product/tvmw5.html